Globalization岩波新書「市場主義の終焉」で著者の佐和氏は“グローバリゼーションの光と影”について次の様に述べています。市場主義者なら「問題とするに値しない」と言うことを承知の上で「矛盾」を列挙すると次のようになる。 1.自由放任のグローバリゼーション(グローバル資本主義)は、国家・住民相互間の不平等を拡大する。こうした不平等の拡大は国際的な緊張を高め、紛争と難民問題に悩まされることになる。 2.ヘッジファンドと呼ばれる短期資本は、高金利を求め巧妙にリスクを回避しながら、グローバルに動き回り発展途上国の通貨危機を頻発させる。 3.地球上の90%が工業化を遂げたので、工業製品の生産能力は過剰となり、国際的なデフレの長期化が懸念される。 4.グローバリゼーション構築を是とするWTOは異なる型の資本主義の間に生じる貿易摩擦を調停する機関としては不適切である。 5.グローバル資本主義は、地球環境の汚染・破壊を防除っする力学を内蔵していない。従って、保全の為には市場の力を制御する国際機関の設立が必要である。 グローバリゼーションによる経済繁栄を謳歌したアメリカが、今後ともグローバル市場経済の均質化を促進させようとするだろうが、昨今見られる経済力に陰りによっては、そのガバナンスから身を引く可能性は無きにしもあらずである。その様な無秩序状態を防ぐ為には、国連に“経済安全保障理事会”を設けることが、現実味を帯びてくる。 今日の日本では、市場主義の信奉者がエコノミストの圧倒的多数を占めている。今から30年前には「市場の失敗」を言い募り、20年前には日本型制度・慣行を誉めそやしてエコノミストの多数派が、今では日本型システムのアメリカ化と市場主義改革の断行を唱和する様になった。 市場主義改革の推進は「必要」であるが「十分」では無い。 市場主義改革の遂行による効率性を確保しつつ、副作用の緩和を目指す「第三の道」改革による、公正で「排除」の無い社会の実現を同時に目指す。これこそが「必要」にして「十分」な改革なのである。 同時改革を可能にするには、平等、福祉等、そのままでは市場主義経済の妨げとなりかねない、既成の価値と制度の根源的なパラダイム・シフトを図って行くことが是非とも必要となるのです。 |